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2005.05.13

本:多民族国家 中国

書名:岩波新書 多民族国家中国
著者:王柯
taminzoku

著者は東トルキスタン関係の研究で著名。
中華文化の「多民族的」性格については、その形成期には漢族ではなくむしろ周辺の異民族の支配者だったことから、「中華文明は周辺の人々を排除するのではなく、受け入れて共存共栄することを正当な政治権力の象徴する文化となった」、ことから中国がチベットや東トルキスタンの独立を絶対に認めないのは、近代政治学的な近代国家と領土との関係だけではなく、「中国国民にとって周辺の民族が中国に見切りをつけることは支配者の資質が問われる問題でもあり、他門族国家体制を維持できるかどうか、つまり「中国」が成り立つかどうかという根本的な問題にもかかわっている」(PP212-213)というのが出発点。

歴史的な展開から中国共産党統治下での少数民族政策の展開に加えて、チベット仏教やイスラムを中心とした宗教の関係や、国際政治の中での「チベット問題」、「東トルキスタン独立運動」など、概括的にまとまってます。

チベット関係の解説は、日本での先行研究の成果も取り入れているんでしょうが、多くは中国の文献に因っているとの印象。また、、当然のことながら「中国」からの視点であって、チベットからみてどうだったのかというのは分析の枠外になるんでしょう。無論、チベットにおいて近代的な「国民国家」意識が存在していたかどうかはさらに分析の対象なんでしょうけど。

やはり、チベット関連といえば毎日新聞との法則はその通り(笑)で、4月10日に山内昌之先生による本書の書評が掲載されてました。そのもっと詳細な書評はこちらを。

で、へぇと思った記述をいくつか。

・チベット亡命政府の代表団が82年4月と84年10月に北京を訪問し、85年にはダライ・ラマが一時帰国すると伝えたため、中国政府はダライ・ラマ14世の故郷である青海省当彩村に廟堂付きの行在所を建て直し、道路も舗装した。(pp195-196)(本にはその写真も掲載されています)

→そこまで準備してたとは知らなかった。ま、ラサのポタラ宮にってことは想定してなかったんでしょうね。中国共産党としてはチベットに共産党を超える権威が存在することを認めないと暗に言ってるんだと。

・新聞報道では青海省では「鳥葬」を行おうとしてもタカが遺体を食べなくなった。近代化がすすみ、残留農薬や食品添加物の大量摂取で化学物質がたまっているためではないか。(pp170-171)

→なお、この本では「鳥葬」を魂が抜けた後の遺体を「布施」するものと正しく記述してます。中国だと鳥葬を「天葬」と書いて、魂を鳥に託して天に運んでもらうとかの間違った解釈が多いんで。

・中国政府は「チベット独立」は話し合いで解決しようとしているが新疆の独立(東トルキクスタン独立運動)は断固として取り締まろうとしている。(p199)

→お立場により言いたいことがある方は多いんでしょう(笑)。ただ、前にも書いたことがありますが、中国政府としては、ダライ・ラマ法王の対外活動は「宗教活動目的で政治活動はダメ」とのラインであれば、あとはちゃんと抗議したもんねというアリバイ作り的対応になってるが、東トルキスタン関係は何が何でも絶対ダメとか言ってくるそうです。聞いたハナシですが。

で、オタクチェック
・「チベット仏教の総本山デープン寺」、ダライ・ラマ幼年期の摂政を出すラサのリンシ(四林寺)が「レティン寺、クンデリン寺、ツォモリン寺、ディトゥク寺」(p97)とかあります。

前者は何かヘン。あえて言うならジョカン寺(写真)じゃないのかな。
 jokhang
後者はクンデリンとツォモリン以外はツェチョリンとテンゲリン。そもそも末尾が「リン」のお寺が4つあるから「リンシ」なんだけど。レティン・ゴンパはラサにはないし。あとのディトック寺てのは?

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